大国主の別名、大穴牟遅神(おおあなむじなのかみ)には八十神と呼ばれる兄弟神がいた。彼らは、因幡の八上比売(やがみひめ)に求婚するため旅をしていた。
大穴牟遅神は皆の荷物を背負わされ、最後尾を歩いていた。
気多の岬で、サメを騙した報いで毛皮を剥がされた兎が苦しんでいた。八十神達は、「海につかり、風にあたり、山で寝ていろ」と教えました。
その通りにすると、更に瀕死に陥ってしまいました。そこに荷物を持った大穴牟遅神が通りかかりました。
大穴牟遅神は、「今すぐ川の真水で身体を洗い、蒲の穂敷いていなさい」と教えました。兎がその通りにすると、元通りになりました。
兎は、「あの八上十神達は、八上比売とは結婚出来ないでしょう。あなたこそ、八上比売を妻にすることが出来るでしょう」と言った。
素とは何もないという意味でもあります。つまり素兎(白ウサギ)とは、毛皮を剥がされた兎を表現しています。
漢方では、蒲の花粉を蒲黄といい、止血薬です。大穴牟遅が蒲黄を用いたのは医術の通じている暗示でしょう。
ですが、この話には別の一面もあるのです。綿毛のような蒲の穂を体中にまぶすことで、兎は毛皮が再生したと思い、安心して天に昇ったいうことです。
つまり霊的救済の物語なのです。大国主神は兎の死に際し、安心をもたらしたのです。
その救済があったからこそ、後に大国主神が、見えない世界、つまり霊的世界である幽界の主祭神になれたのではないのでしょうか。
因幡の白兎